新聞の読み方 | 日記
2013.04.17(Wed):憲法・法律問題
本日は、昨日のブログのつづき。

自民党の憲法改正草案では、
現行憲法21条で保障されている結社の自由について、
公益及び公の秩序を害することを目的とした結社は認めない
と明記している問題。

これは、自民党のQ&Aによると、
オウム真理教に対して破壊活動防止法を適用できなかったことへの反省
を踏まえたものらしい。
しかし、これは、サリン事件が起きてからの問題。

先週の衆議院の予算委員会で、民主党代議士が指摘していたのは、
自民党のような案では、
戦前の治安維持法のような法律を認めることにもなりかねないということ。

そして、オウム真理教のような団体への懸念については、
自民党案のように明記しなくとも、
現行憲法で十分対応できるということ。
そうした最高裁の判例があることも、内閣法制局から紹介されていた。

これに対し、安倍首相は、
オウム真理教のような反社会的な団体を取り締まるためには、
改正案のように明記して強調する必要がある旨、答えていた。


以上のやりとりは、”公共の福祉”の意味から考えると分かりやすい。
この意味については、いろいろ学説があるようだが、
大きく二つに分けることができると思う。

一つは、”公共の福祉”という言葉から素直にイメージされる意味。
つまり、社会秩序維持や社会福祉実現などのためにする政策的な制約。
”政策的”ということは、
立法府・国会に裁量が認められているということ。
だから、戦前のように過度な人権制約を認めることになるのではないかと、
まさに前述の民主党の代議士が指摘したような問題があるとされている。

もう一つは、政策とか、立法府・国会の裁量とかとは全く関係がなく、
人権そのもの自体に備わっている、普遍的で本来的な制約。
だから、国会とか、誰かが制約の内容を決めることはできない類のもの。
そもそも、誰かが決めるという性質のものではない。

例えば、結社の自由といっても、
犯罪を目的とした結社の自由は認められていないとされているが、
これは、政府や国会が決めたことではない。
誰が何といおうと、結社の自由に元来備わっている制約である。

以上の一つめの意味の制約が、”外在的制約”、
そして二つめの意味の制約が、”内在的制約”ともいわれている。


だから、民主党の代議士が主張していたのは、
反社会的な団体を取り締まるにしても、
内在的制約で十分であるということ。

他方、安倍首相や自民党が主張しているのは、
外在的制約まで必要であるということ。

ご本人たちは、ここまで意識されて質疑応答されていたかは、
分からないが…


だから、自民党の憲法改正草案では、
”公共の福祉”ということばについて、
内在的制約のみならず外在的制約という意味も含まれていることを明確にすべく、
”公益及び公の秩序”と改正している。

そして、外在的制約も含めて解すべき理由については、
自民党のQ&Aによると、
”個人が人権を主張する場合に、他人に迷惑をかけていけないのは当然のこと”
となっている。

しかし、これは、自民党が同じQ&Aでいっている、
内在的制約としての ”人権相互の衝突の場合”を
単に言い換えたにすぎないものである。

つまり、”公共の福祉”ということばの意味について、
外在的制約も含めて解する理由のところで、
内在的制約の必要性をもって説明してしまっているのである。


いずれにせよ、自民党の憲法改正草案は、
他の多くの方々がおっしゃっているように、
現行憲法より、人権制約が色濃く出ているような気がする。

例えば、消費税率引上げの際に消費税還元セールを禁止する法案なるものがあるが、
これは、営業に自由に対する外在的制約である。
(営業の自由は憲法に明記されてないが、最高裁の判例で、
 22条の職業選択の自由の一環として認められている。)

外在的制約は、営業の自由といった経済的自由の制約にはなじむが、
表現の自由といった精神的自由にはなじまないともいわれている。

ただ、自民党のQ&Aによると、
表現の自由や結社の自由といった精神的自由といえども、
どこまでも自由である内心の自由とは異なり、
社会的に表現する段階になれば、一定の制限を受けるのは当然のこと
とされている。

これはこれで、いっていることはおかしくないと思う。


自民党の憲法改正草案や、そのQ&Aをながめていると、
有識者からのヒアリングや起草委員会での議論を経てできたものなので、
今の憲法で問題とされている点について決着をつけようという姿勢、
そして、通説を認め、それを明文上明らかにしようという姿勢が見受けられる。

しかし、特に自民党の思いの丈が込められているところについては、
改めて専門家にきちんとチェックしてもらっていない
と思われるところも散見される。


今度の夏の参院選で、憲法改正が争点になりそうだが、
各党の案やQ&Aをみるときは、
当然のごとく、もっともらしいことが書かれているので、
その内容を吟味することがとても大事になってくる。


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