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新聞の読み方 | 日記
2013.03.23(Sat):経済・税金問題
元税務職員としては、
やはり、この話題に触れないわけにはいかない。

そもそも、”臨時特例企業税”って、何?

まず、国の税金の ”法人税”があり、
その地方税版ともいうべき
”法人事業税”という別の税がある。

これらの税金、ある年に、法人が黒字になっても、
過去5年(現在は7年)の間に赤字があれば、
その赤字と相殺して、その年の黒字がチャラになれば、
払わなくてもいい。

しかし、神奈川県は
”神奈川の行政サービスを受けて利益を出しながら、
 神奈川に法人事業税を払わないのは、おかしいじゃん。”
と考え、
”その年だけみれば黒字だったら、その黒字分に税金かけちゃえ”
といって、かけた税金が、”臨時特例企業税”である。

しかし、最高裁は、
”こんなんだったら、
 法人事業税が、黒字と過去の赤字とを相殺できるようにした意味が、
 なくなっちゃうじゃん”
という理由で、違憲判決を下した。

なお、”臨時特例企業税”は、
平成16年に、赤字企業にも課税する ”外形標準課税”なるものが導入されたこともあり、
現在はない。


さて、いろいろ疑問がわいてくるが、まず、

  なぜ憲法が関係するの?

というところか。

神奈川県のような地方公共団体が税金をかけようとする場合、
憲法84条の租税法律主義と地方税法3条により、
条例で定める必要がある。

さて、その条例だが、
憲法94条は、”地方公共団体は、…法律の範囲内で条例を制定することができる。”
と定めている。

すなわち、憲法でも、
地方自治制度というものが保障されているといわれてはいるが、
法律は全国民の代表が決めたものだから、
一地方の議会は、その全国民の代表が決めた”法律の範囲内”でしか
条例を定められないということ。

ただ、この ”法律の範囲内”というのがくせもの。
こんな曖昧な表現じゃ、意味が分からない。

この法律と条例との関係について、
税金に限らず一般的なお話しとして、最高裁は、

  法律や条例の文言だけじゃなく、
  それぞれの趣旨や目的、内容、効果とかも総合的に考えて、
  条例が、”法律の範囲内”かどうかを判断すべき。

という旨の判決を出したことがある。
要は、最高裁も、
”法律の範囲内”とは何か、という疑問に直接答えようもなく、
判断基準を示したのである。

裁判所も、こうした過去の最高裁の判決(判例)にしばられ、
よほどの理由がない限り、判例を覆すことはできない。

だから、今回の件についても、
裁判所は、この過去の最高裁の判決に従って、
地方税法と ”臨時特例事業税”を定めた条例、
それぞれの目的や効果をみたのである。

最高裁判所の前の東京高等裁判所は、
この条例は、地方税法とは目的が異なるから、
”法律の範囲内”と判断した。

しかし、最高裁判所は、この条例は、
”各事業年度の損益を平準化して税負担をできるだけ均等にし、
 公平な課税をする地方税法の趣旨や目的に反する”
と判断し、”法律の範囲内”ではないとして、
憲法94条に違反するという旨の判決をしたのである。

ちなみに、最高裁が、過去の判例と異なる判決をする場合は、
大法廷で行われるのだが、
今回の場合は、過去の判例に従った判断をしたので、
小法廷で行われた。


さて、この最高裁の判断をどう考えるか?

そもそも、ある年の黒字を、過去の赤字と相殺できるようにした直接の目的は、
不良債権処理や創業・新規事業を支援するところにあったので、
最高裁のいう目的は、あまりに広く抽象的にとらえすぎた観はある。

しかし、実際は、どの企業も相殺できるので、
最高裁のいう目的でもおかしくはない。
つまり、最高裁の判断は、
本来の制度目的と制度設計が完全に合致していないことに起因する。

次に、引っかかったのは、
”公平な課税をする地方税法の趣旨や目的”という部分である。

企業努力をして事業に成功し、毎年黒字を出している企業が税金を払い、
企業努力を怠り事業に失敗し、赤字を出したことがある企業が税金を払わない
というのが、本当に公平といえるのか、

また、企業努力の結果だとしても、
事業の失敗のツケを税金免除という形で払う
というのが、本当に公平といえるのか、
という疑問はある。

しかし、地方税法で決まっているのだから仕方がない。

裁判所としても、今回問題となっているのは、
条例のほうであって、地方税法のほうではないから、
そこまで判断することはできない。
そこまで踏み込んだら、立法権の侵害にもなるのであろう。


さらに、”臨時特例企業税”が、”法人事業税”の趣旨に反するのなら、
赤字企業にも課税する ”外形標準課税”なるものも違憲になるではないか、
という疑問もでてくる。

この点については、
”外形標準課税”と ”法人事業税”の対象となる企業は完全には一致せず、
一方、”臨時特例企業税”の場合は完全に一致している。

さらに、”臨時特例企業税”がよくなかったのは、
露骨に、ストレートな形で、
黒字が過去の赤字でチャラになれば税金を払わなくていいといった、
”法人事業税”の効果を台無しにしちゃった点であろう。


そして、神奈川県がいっていた

”神奈川の行政サービスを受けて利益を出しながら、
 神奈川に法人事業税を払わないのは、おかしいじゃん。”

という部分については、
すでに、神奈川県がいっているような理由で、
”法人県民税”なるものが別に課されている。


なお、”臨時特例企業税”は総務大臣の同意を得た上で創設されたものなので、
最高裁は、この行政判断をも否定した形になる。

全国の高等裁判所でも、最近、
先の衆院選は一票の重みに格差があったとして違憲であったとするなど、
三権分立に反するようにも思える判決が続いている。
(3/7付のブログご参照)
しかし、逆にいえば、それだけ、最近の立法(国会)や行政はひどい、
ということがいえるのかもしれない。


最後に、今回の最高裁判決を受け、神奈川県知事は、
課税自主権や地方分権に反する、
と憤っていた。
しかし、この点は、一人の裁判官の補足意見にもあったように、
そして、識者の方々もおっしゃっているように、
地方税法のほうを改正するしかないのであろう。

この点、この地方税法も、
地方分権を拒む規制ともいえそうである。



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