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実は、食いぶちを稼ぐために、
塾講師とか家庭教師をしようと考えている。

そこで、今回は、およそ5か月ぶりに
お受験勉強の方法について述べてみたい。
(12/30、12/31、1/6付のブログご参照)

今回は、東大古文についてである。

助動詞などの文法事項や重要単語を知っておくことが
必要不可欠であることは言うまでもない。

ただ、東大古文は一筋縄ではいかない。
まず、実際に東大入試で出題された
次の『大和物語』の一節を読んでみていただきたい。

“近江の介(平安時代の官人)がむすめ、物の怪にわずらひて、
 浄蔵大徳(平安時代の高僧)を験者にしけるほどに、
 人とかく言ひけり。
 忍びてあり経て、人の物言ひなどもうたてあり、
 なほ世に経じと思ひ言ひて失せにけり。”

この解説の前に、東大古文の特色について述べると、
重要単語集にはない語句の意味を文脈から類推させる能力、
そして、その文脈だが、
物語の展開やストーリを
問題の注書きや中世の常識から類推させる能力
これらの能力を試しているように思える。

まず、実際の入試で意味が問われた語句の例として、
“こしらふ”(なだめすかす)
“言ひおもむく”(説得して仕向ける)
“物へいく”(外出する)
“相する”(占う)
“思ひけつ”(さげすむ)
などがあげられる。
これらの語句は、市販の重要単語集に載っていないばかりか、
中辞典程度では載っていないものさえある。

ただ、ここまでは、文脈さえつかめれば何とかなる。
問題は、その文脈というか、ストーリをつかむほうだ。

例えば、実際の東大入試で出題されたお話しには、
次のようなものがある。
『堤中納言物語』の一節である。

 妻のいる男性が、別の女性のところに夜ばいに行く。
 不倫相手の娘のほうの父親はというと、
 まー、しゃーないか、
 とそのまま認めていたのだが、
 さすがに世間のほうがうるさくなってきたので、
 夜ばいをした男に、娘を何とかしろ、という。
 そこで、男は、長年連れ添った妻のほうを
 どこに追いやろうかと悩んだあげく、
 とりあえず、不倫の事実を妻に打ち明けて
 妻の反応を見てみよう、というところで終わる。

女性蔑視もはなはだしいお話しだが、
これなんか、
 男性が女性のところに
 三日連続で夜ばいして、やることやって、
 娘の両親のほうはというと、
 そのことを知っていても知らないふりをし続け、
 それで男性が認められたら正式な夫婦となる、
こうした、当時は三連の夜ばいを必要とした時代背景を知らないと、
なかなか分からない。

また、実の妹に対する恋情を描いた『増鏡』の
一節が出題されたこともあるが、
これなんかも、まさか兄が妹に恋愛感情を抱くはずがない
と思い込んで読むと、まったくストーリが分からなくなる。

さらに、実際の東大入試で出題されたわけではないが、
『古今著聞集』には次のようなお話しがある。

 ある女性歌人がいて、
 自分の歌を勅撰集に載せてもらおうと、
 男性といったん肉体関係をもった後で捨てられ、
 そのことを嘆く歌を事前につくっておく。
 そして、計画どおり、後三条天皇の孫と肉体関係をもち、
 捨てられた上で、その孫に事前に用意した歌を贈り、
 見事千載集入集を果たす
 というお話しである。

現代ふうにいえば、枕営業ともいうべきお話しである。
しかも、お相手は天皇の孫で、目的は官選文集入集である。

もちろん、格式高い古文のことだから、
肉体関係をもつというところは、
“逢ふ”とか、“見る”という表現でごまかす。
いやいやいや、“見る”じゃないでしょう。
いくら、当時の貴婦人が
めったに男性に姿を見せることがないといっても…

こんな感じだから、源氏物語に代表されるように、
倫理や道徳も何もあったものではないことが
中世ではよくあるということを念頭に古文を読む必要がある。


そこで、冒頭の『大和物語』を
もう一度読んでみていただきたい。

これ、実は、
 病気の官人の娘のために
 高僧が加持・祈祷をしている間に
 二人ができちゃって、こっそり交際を続けていたんだけど、
 周りの人から、現代の週刊誌じゃないけど、
 何やかや言われるから、
 こうした噂にこらえきれなくなった高僧のほうが、
 “もう世間では暮らしたくない”
 と思いそう言って、行方をくらました、
という意味である。

たしかに、この文章のあとに、
男女間の恋歌のやりとりがあるのだが、
まさか、こんな不らちな文章がでるわけがない
と思いこみながら読んでしまうと、
“失せにけり”なんか、官人の娘が亡くなった
と解してしまいがちである。

そして、娘は亡くなったはず、
さらに、高僧が恋愛の当事者になるはずがない、
そう思い込んでしまって、後に続く恋歌のやり取りと読むと
もう、頭がこんがらがってしまうのである。

中世は、倫理も道徳もあったものではない、
そう思って読まないと東大古文は解けない。

だから、難しい。


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