FC2ブログ
その日、彼は仕事が忙しかった。

ようやく帰宅できるとき、
終電はもうなくなっていた。

だから、
タクシーで帰るしかなかった。


彼が住んでいるのは、
閑静な住宅街。

タクシーの止まる音、
そして、
タクシーのドアが閉まる音が、
寝静まった街の中で
少しだけ響いた。


すると、少しだけ離れた豪邸から、
見たことはあるが
決して親しくはないご婦人が、
鬼の形相で飛び出してきた。

『うちの〇〇ちゃんは、
 アナウンサーをしていて、
 毎朝、テレビ番組に出ているの、
 あなたも知っているでしょ。
 〇〇ちゃんの大切な睡眠、
 邪魔しないでちょうだい。』


彼は、唖然とするしかなかった。

なぜなら、
テレビ局に向かう
〇〇ちゃんを待つ一台のハイヤーが、
毎朝4時に出すエンジン音、
彼は、その音で
いつも睡眠を邪魔されていたからである。


スポンサーサイト




Tag:
| TrackBack:0
TrackBackURL
→https://inoino700.blog.fc2.com/tb.php/326-b8f32da5