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両親の思い出 | 日記
2013.01.18(Fri):両親の思い出
札幌国税局徴収部から
さいたま市にある関東信越国税局調査査察部に異動。

母と暮らすと料理や家事で負担をかけてしまうと思い、
さいたま市の宿舎で暮らすようにした。
もちろん東京の自宅にはしょっちゅう戻っていた。
父も近くの病院で入院していることもあり。

母は毎日、父の見舞いに行っていたが、
父の介護から解放されたこともあり、
元気になっていた。


このころ、放射線治療が功を奏し、
肺のガンは小さくなっていた。
ただ、放射線治療により味覚が鈍くなったせいで、
母の食事量は増えていた。

そのためか、本当に若干だが、ふっくらし始めていた。
抗がん剤治療で抜けた髪の毛もすっかり元に戻り、
外見はおろか、普段の行動も元気だった頃に戻っていた。

それが数か月続き、そしてついに、
母の命は一年ももたないかもしれないと言われてから
一年が経った。

  このままいけば母のガンは治る。

そう、信じ切っていた。


年が明けて三月、
父の主治医の先生から、お伝えしたいことがある
との連絡を受け、母と二人で病院に行った。

どうやら、父のほうもガンが再発したらしい、と。
しかも、あと数か月…

  お母さんのみならずお父さんもか…

母も私もこの医師のことばを信じた。

自宅に戻ると、母は父に万が一がおきた場合にと、
いろいろな書類の在りかを教えてくれた。

それは、自分自身も覚悟した上でのことだったのかもしれない。


母は毎日、私もほぼ毎日、
父のところに見舞いに行っていた。
しかし、四月に入ると、
母も日に日に元気がなくなり始めてきていたのが分かった。

父の病室は二階だった。
母は当初、階段をのぼっていたが、
そのうち、エレベーターを使い始めた。

病室につくと、いつの日からか、
母自身も父のベッドの手すりに両腕をかけ、
自分の頭を下に向けてその両腕におき、
しばらく目をつむるようになっていた。

このころ、母の主治医の先生からは、
ガンが頭のほうに転移しているといわれ、
そう長くはないようなことを言われた。
ただ、具体的な期間は言われず、
主治医の先生のほうも言いようがなかったのかもしれない。

  お母さんもか…

それでも、数か月はもつ、
とかってに思っていた。


父はというと、
本当にボケてしまったかと思うくらい、
母と私が見舞いに来ても
反応がなかった。


そして、ゴールデンウイークに入ると、
病院から、
父の入院期間が長くなってきていたので、
療養型の病院へ転院するよう、いわれた。

療養型の病院とは、
医療を完了し病状が安定した後も、
介護を必要として退院することが難しく、
継続して療養が必要な場合など、
そうした長期入院が必要な患者を収容する
ことができる病院のことをいう。

ただ、家庭や社会生活への復帰を目的としたものなので、
いつまでも入院していられるわけではない。

そして、母と転院すべき病院を探すために
ソーシャルワーカーさんのところへ
相談しに行った。
そのソーシャルワーカーさんは、
可愛らしい感じの若い女性の方だった。


それから、数日後、
母が、おそらく生まれて初めて
私が起きても寝ていた。

母は毎朝5時ごろに起きて
家事を始めていた。

しかし、この日だけは違っていた。

それでも、しばらくして起きて、
家事を始めた。


すでに、ゴールデンウィークに入っていたこと、
母の体調がすぐれていなかったこと、そして
父も近くの病院で入院していたこともあり、
ここ数日、東京の自宅に居っぱなしだった。

母とテレビを見ていたとき、
ある登場人物がガンで亡くなるというドラマをやっていた。
しかし、あわててチャンネルを変えるのも変だったので、
そのまま見ていた。

今でこそ、ガンを告知するのが主流のようではあるが、
家庭の事情によっては、隠しているケース、そして
今回の母のように、転移は隠しているというケースもある。

だから、テレビのドラマとかで、
冷や冷やとさせられるシーンを見せられることがある。
こんな症状だったらガンなんだ、とか、
これだけ進行しているんだ、とか。


母は、洗濯機にかける前に必ずシャツの襟汚れを
石けんで直接こすって落としてくれる。
今でこそ、襟袖汚れ用の液体洗剤があるが、
そうした洗剤がない時代から続けてきた。

が、今日は、明らかにいつもの背中と違う。

母の代わりに洗濯機のボタンを押す。
責任感・使命感の強い母は、
それくらいのことしか私にさせなかった。
それでも、めったにさせない。

家事を一通り終えると、
ついに、母は、病院に行くと言い出した。

それから、母が二度とこの自宅に戻ることはなかった。


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