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その日の朝も、
一声一声、感謝の気持ちをこめながら
通勤・通学のみなさんに声をかけていた。
しかし、
だんだんと選択の時間が迫って来た。

その日は東京大学の入学式であった。
そろそろ切り上げないと、式に間に合わない。

しかし、ここで去ってしまうと
挨拶を途中で止めてしまうことになる。

以前、東大を中退したのは入学式前だったから、
今回が最初で最後の入学式になる。

そう思い、私は
入学式の出席のほうを選択した。

私が挨拶を止めるのを待っていたかのように、
雨が突然降り出した。


入学式会場の武道館に到着するころには
雨は激しさを増していた。

『保護者はこちらじゃありません』

と言われないよう、常に
左手に傘、右手に学生証を握りしめていた。

その甲斐あって、
係員の方から何の注意も受けずに
すんなり武道館に入場できた。

格闘技やコンサートの聖地、
しかし、式開始間近に行ったため、
座らされたのは二階席だった。

同じ二階席には保護者用の席も見えた。
むしろ年齢的にはこちらのほうに座るべきか。

自分らの子どもが東大に入学。
さぞかし喜ばしいことであろう。
独身で子どものいない私でも、想像がつく。

おばあちゃんやおじいちゃんが
出席されているご家族も少なくない。

私の同級生のなかには、
地方から上京してきたおばあちゃんのために
東京を案内した子もいた。

私には祖父母はおろか両親もいない。
孤独であることが苦にならない私でも、
その日その時だけは、
さみしかった。


が、その数日前の
中学の同窓会の準備のため
居酒屋で数人集まったときを思い出した。

その時、
開始から一時間くらい経つと、
バースデーケーキが運ばれてきた。
四月の誕生日が二人いたからだ。

しかし、
一月が誕生日の私の名前も
チョコレートプレートにあった。

そう、いっしょに
東大合格を祝ってくれたのである。

さらに数か月前の一月にさかのぼると、
自分の誕生日のときには、
予備校で同級生の女の子二人から
『お誕生日おめでとうございます。』
と声をかけてもらっていた。

誕生日に声をかけられたのは、
亡き母がかけてくれて以来、
数十年ぶりであった。多分。


今までの選挙や、その後も
たくさんの方々から励ましの声もいただいた。

そう、私にも仲間がいる。


そう気がつくと、
選挙権のない同級生たちの姿が見えてきた。


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