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2016.04.09(Sat):ボランティア活動
ある朝、駅頭挨拶をしていたとき、
突然、声をかけられた。

『いのさん、俺、俺!』

この敬称とタメ口の入り混じった言い方で
すぐ、分かった。

以前も何度か述べたが、
私は、ボランティアで
いく人かの中学生と勉強をしている。

彼ら、彼女らは、
1~2年上の先輩には敬語を使うが、
35歳以上年の離れた私には、
タメ口をきく。

この男の子が勉強会の仲間に入ってきたのは、
昨年の晩秋ごろだったか。
当初は、周りの女の子が気になって
勉強も手がつかない状態だった。

中学校でも勉強が得意とはいえない彼は、
当時中三だったが、数学では、
中二や中一程度の計算もおぼつかなかった。

それでも高校に行きたい。
だから、彼は仲間に入ってきたんだと思う。
私は、そんな彼に
なんとしても合格してもらいたかった。

入試まで数か月。
数学でできることは、
計算問題で満点を取ってもらうこと。

私は、彼とひたすら、
過去の計算問題を解きまくった。
年末が近づくにつれ、
彼は本気モードになっていった。

そして、年明けには
計算は完璧な状態になっていた。

世の中、
テストの点数や偏差値が高いほど頭がいい
と思われがちだが、それは、実は、
やる気があるかないか、
努力してきたかどうか、
環境に恵まれていたかどうか
といった違いだけであって、
理解する能力とかはあまり差はないんだと
彼といて実感することができた。

そんな彼も、見事
第一志望の高校に合格。
ま新しい高校のブレザー姿の彼が
そっそうと私の前に立っていた。

『昨日、入学式だったんだよ』

私は、これまでの人生で
自分のことでうれしかったことは
何度かあった。
高校や大学に合格したとき、
陸上競技で自己ベストを出したとき、
特にフルマラソンで2時間台を出したとき。

しかし、正直、他人のことで
こんなにうれしくなったことは
今までになかった。

もちろん、彼の合格は知っていた。
しかし、あらためて、
朝日に照らされた彼の制服姿を見ると、
こみあげてくるものがあった。

私は独身なので子どもがいない。
彼とのつきあいは数か月にすぎない。

だから、世間の親御さんらが、
手塩にかけて育ててきたお子さんの
入学する姿がどんなにうれしいことか、
想像できた。


彼は二日目にして、さっそく、
首もとのネクタイをゆるめていた。

私がそのネクタイをなおそうとすると、

『遅刻しちゃうから』

と言って、駅の中に消えていった。


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