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『あら、いらっしゃい。』

「こんにちは。」

すでに店内には、二人の客が、
向かい合うように置いてある
二つのソファーに
一人ずつ座っていた。

一つには、私より年上の男性が
こちらに背を向けて、
もう一つには、女の子の小学生が
こちらから見えるほうに
座っていた。

「小学生だったら
 女子でも理髪店はありか」

と納得した。

『お次の方』

と呼ばれると、
男性のほうがすくっと立った。

「そっか、俺は、
 この女の子の次か。」

と思い、しばらく待っていると
女の子が突然、
冷えた理髪店から熱い外に出て行った。

不思議に思いながらも、
しばらく待っていると

『お次の方』

と呼ばれた。

女の子が戻って来ていなかったので
私が座り続けていると、
この理髪店の女性主人が、

『どうそ。』

といってくれた。

「でも、私の前に女の子が…」

と私がいうと、

『あー、あの子は○○塾の子よ。
 あの子が来たときは
 まだ塾が開いてなかったから、
 暑いなか外で待っているのも
 気の毒だと思い、
 ここに入れてあげたのよ。』

このとき、
この理髪店の隣に
小さな塾の小さな入口があったのを
ふいに思い出した。

お客でもない子を
当然のように理髪店に入れる
粋な計らい。

これをきっかけに
他の子どもも理髪店に
いりびたるようになったら困る、
なんて野暮なことは考えない。

いや、万が一
そうなったとしても、
隣に座っている男性も
文句は言わないであろうし、
むしろ私は大歓迎である。

こう思いながら、
私は、女の子の代わりに
椅子に座った。


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